新チームに漂った不安 |
![]() |
3月21日に開幕する第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日杢局校野球連盟主催)に出場する智弁学園。選手たちは大舞台に向けて練習に励んでいる。 春夏1回ずつ4強の強豪とはいえ、現在のメンバーは全員が初めての甲子園だ。 苦境を乗り越えてセンバツ切符をつかむまでの軌跡をたどった。【鶴見泰寿】 昨夏の奈良大会。 2年ぶりの制覇を目指した智弁学園は準々決勝(7月24日)で大和広陵にサヨナラ負け。その翌日、新チームの主将に就いた 高岡佑一選手(2年)は29人の部員に呼び掛けた。 「甲子園で活躍する同じ目標を持って智弁学園に入った。みんなでまとまらんと」 右翼手だった高岡主将を始め、12人が夏の大会でメンバー入りしていた。 自信を持ってプレーできる技術と、試合経験もある。しかし、そこに落とし穴があった。 新チームは秋の近畿大会県予選までの目標を「練習試合を無敗で乗り切る」と決めた。 8月3日から練習試合を組み、センバツ優勝経験のある近大付(大阪)や上宮(同)をど相手に9連勝。自慢の打線は121 点を挙げた。 8月11日、崇徳(広島)との試合も五回を終えて14-3。楽勝ムードは主戦の尾田恭平投手(2年)が五回にマウンドを降り ると一変した。 猛烈に追い上げられ、九回に2点本塁打2本を打たれ、逆転で負けした。 「何でや」。悔し泣きし、救援陣に憤る選手もいた。 この試合、捕手を務めた吉岡郁哉選手(2年は、打ち込まれる投手に「声をかけられなかった。 タイムも取れず、各自が一人でやっているようだった」と振り返る。 一塁を守った岡本和真選手(2年)も「捕手の指示が外野に届かないときは内野が伝えないといけないが、それを怠った」。 まとまりに欠け思わぬ敗戦 個々のレベルは高くても、まとまりに欠ける。 新チーム結成時、小坂将商監督は弱点に気付いていた。 9月開幕の県予選までに35試合をこなし、24勝7敗(引き分け4)。8月30日の東大阪大柏原 (大阪)戦では四回までに6点をリードされたが、九回に猛打で10点を奪い逆転勝ち。「本気に なれば勝てる」。選手が自信を深めた試合もあった。 それでも、高岡主将は不安をぬぐえなかった。 「県予選までにチームがまとまることはできなかった。 自分が活躍すれば勝てる、と思う選手が多い。チームプレーの意識が希薄だった」 9月、2回戦から登場した県予選は、初戦の奈良戦に2-Oと辛勝。3回戦の法隆寺国際との試合は苦戦になった。 |